右側に上杉、左側に緑川。
そして、目の前には青色の水彩絵の具で塗りつぶされた海岸線が広がる。
「でも今日は晴れて本当に良かったね」
「いつも暇してるはずのお前が、突然『明日行こ』とか言い出すから訳がわからないことになったんだろ」
「だって先のことなんて見えないじゃん。だったら行ける時に行くってのが鉄則みたいなもんでしょ」
「だからって、唐突すぎないか?」
「それとも大樹くん。こんな可愛い女の子二人とダブルデートしてても、全然楽しくないのかな?」
「「!?!??」」
今日の目的地は、江ノ島の対岸にある水族館。確かに格好のデートスポットと言ってもあながち間違ってはいない。
昨晩の天気予報では、今日は雨予報のはずだったんだ。それがこの状況、俺は春の陽気のせいだろうか、頭がおかしくなりそうだ。どこかぼんやり上の空を見つめていたが、右側にいる上杉がいつもどおり睨みつけていることに気づくと、ふと我に返ることができた。これが平常運転なのもどうかと思うが。
「てかそれ、ダブルデートの意味が確実に間違ってるだろ!」
「なにそんな怒ってるのよ? デートをつまらなくさせたい意図でもあるわけ?」
「べ、別にそんなものはないけど……」
「それならこうやって大樹くんにえいってくっついても全然平気なわけだ」
「「!?!?!??!??」」
突如緑川が思いっきり身体を寄せてくる。俺の左腕に緑川の柔らかいそれが、体温と共にひしひしと伝わってきた。てかこれ、ちょっと何かが触れてる気がするのだけど。
ただしそれ以上に右側からは熱量の高そうな圧が襲いかかってくるわけで、本当に一体どういう状況なんだ?