春の光輝く風を乗って、桜の花弁がふわりと校門の前へと舞い降りた。入学式は今からちょうど一時間後。あどけない顔立ちでそわそわした素振りを見せる女子高生たちは、ピンク色の絨毯を容赦なく踏み歩く。どこか頼りなさそうにも見える小さな身体は、わずかな勇気という目に見えない魔法を使って、その緊張を解きほぐそうとしているのかもしれない。
初めて入った教室。中学のものよりも僅かに大きく感じる机。
自分の身体と机の大きさを比較して、俺自身の未熟さを測ってみようと試みる。
「よっ、大樹。俺ら高校入っても同じクラスだな」
「おう。よろしく頼む」
中学の頃からの同級生である拓海にそう返しておきながら、そもそも何を頼もうとしているのか、これ以上曖昧なものはないかもしれない。ただの社交辞令なのだろう。
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