つきみかふぇのらいとのべる

ちょっぴり苦めのコーヒーをどうぞ

エーデルシュティメ 第4話『嘘と笑顔の狭間で』(後)

前編へ 右側に上杉、左側に緑川。 そして、目の前には青色の水彩絵の具で塗りつぶされた海岸線が広がる。「でも今日は晴れて本当に良かったね」 「いつも暇してるはずのお前が、突然『明日行こ』とか言い出すから訳がわからないことになったんだろ」 「だっ…

エーデルシュティメ 第4話『嘘と笑顔の狭間で』(前)

目に見えるものと、目には見えないもの。 この世にはその二つが存在し、世界を無自覚に動かし続けている。 目に見えていれば、何も恐れることはない。 注意深く観察してさえいれば、その薄暗い変化にも気づくことができるから。 問題は、目に見えない方。 ど…

エーデルシュティメ 第3話『唐突な小さな来訪者と私』(後)

前編へ「君、喋れるの?」 私はカメレオンのぬいぐるみに対して、こんな質問をしてみる。 もちろんそれだっておかしな話だ。だって相手は一見するとちょっと薄汚い感じのぬいぐるみだよ。「もちろんだよ。喋れるに決まってるじゃん! だってボク、カメレオン…

エーデルシュティメ 第3話『唐突な小さな来訪者と私』(前)

何も変哲もない生活空間に、二人の姿があった。 一人は、今を変えるため、必死に勉強を重ねてきた男の子。 一人は、今を変えるため、必死に自分を追い求めてきた女の子。 リビングのテーブルに二人はノーパソを広げ、今も新しい自分と向かい合おうとしている…

エーデルシュティメ 第2話『オトメゴコロの目覚め』(後)

前編へ 食卓の中央に置かれた大きなお皿の上にはいかにもカリッとした鶏の唐揚と、まだ採れたてと思われるしゃりしゃりなレタス、そこへ真っ赤な艶のあるトマトが彩りを添えている。見た目以上に簡単ではあるけど、共同生活初日の夕食は、ちょっとした歓迎パ…

エーデルシュティメ 第2話『オトメゴコロの目覚め』(前)

人にはいろんな人間がいる。そんなの、誰だって知ってること。 男と女。子供と大人。生きてる人と死んでる人。 死んでる人なんて、目に映ることさえもないのだけどね。 もちろん死んでる人にだって、ちゃんと種類は存在しているよ。 前は生きてたけど、既に…

エーデルシュティメ 第1話『桜と風呂場と新しい部屋』(後)

前編へ「とはいってもまだご飯もできてないし、お風呂も先約がいるからどっちもダメなんだけどね〜」 「だからそうじゃなくて!」 「ん〜? せっかくだからちょっとやってみたかっただけなのに、君って面白くないな〜」 「何をやってみたかったんだよ!?? …

エーデルシュティメ 第1話『桜と風呂場と新しい部屋』(前)

春の光輝く風を乗って、桜の花弁がふわりと校門の前へと舞い降りた。入学式は今からちょうど一時間後。あどけない顔立ちでそわそわした素振りを見せる女子高生たちは、ピンク色の絨毯を容赦なく踏み歩く。どこか頼りなさそうにも見える小さな身体は、わずか…

湘南のつきみカフェ〜文学支店〜 開設!

いろいろあってこちらのサイトを建てることにしました。 今後もよろしくお願いいたします!